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褥瘡予防は皮膚観察から|訪問看護で使える早期発見ガイド

「褥瘡ができてしまってから気づいた…」

訪問看護の現場で、このような経験をされた方は少なくないのではないでしょうか。

褥瘡(じょくそう)は一度できると治療に時間がかかり、利用者さんの生活の質を大きく低下させてしまいます。

しかし、皮膚の状態を正しく観察できれば、褥瘡の多くは予防可能です。

この記事では、訪問看護や在宅介護の現場ですぐに実践できる皮膚観察のポイントと、早期発見から対応までを詳しく解説します。

褥瘡リスクが高い利用者の皮膚の特徴とは

訪問看護では、限られた時間の中で効率的に褥瘡リスクを評価する必要があります。

まず注目すべきは、褥瘡ができやすい皮膚の状態です。

こんな皮膚状態は要注意

  • 乾燥してカサカサしている - バリア機能が低下し、摩擦に弱い状態
  • 薄くて透明感がある - 加齢や栄養不良により皮膚が脆弱化
  • 湿潤している - 失禁や発汗により皮膚が傷つきやすい
  • 浮腫がある - 血流不良により組織が脆くなっている

特に高齢者の場合、加齢により皮膚の水分量が減少し、弾力性も低下しています。

このような状態では、わずかな圧迫や摩擦でも褥瘡が発生するリスクが高まります。

また、栄養状態も皮膚の状態に直結します。

血清アルブミン値が低い利用者さんは、皮膚の修復力が弱く、褥瘡ができやすいことが知られています。

訪問時に必ずチェックすべき皮膚の観察ポイント

訪問看護では、毎回の訪問時に系統的な皮膚観察を行うことが褥瘡予防の基本です。

好発部位を重点的に観察する

褥瘡は骨が突出している部位に発生しやすいため、以下の部位を必ず確認しましょう。

褥瘡の好発部位

  • 仰臥位(仰向け):後頭部、肩甲骨、仙骨部(お尻の上)、踵
  • 側臥位(横向き):耳、肩、肘、大転子部(股関節の外側)、膝、くるぶし
  • 座位:坐骨部、尾骨部

観察の具体的な手順

効果的な皮膚観察には、視診と触診の両方が重要です。

【視診のポイント】

  • 発赤(赤み)の有無 - 特に消退しない発赤に注意
  • 色調の変化 - 紫色や暗赤色は深部組織損傷の可能性
  • 腫脹(腫れ)や水疱の有無
  • 皮膚の乾燥度や湿潤の程度

【触診のポイント】

  • 皮膚温の上昇 - 炎症のサイン
  • 硬結(かたくなっている)の有無
  • 圧迫後の白化の確認 - 指で押して白くなるかチェック

訪問時には、部屋の明るさも重要です。

自然光の下で観察するか、十分な照明を確保してください。

褥瘡のステージ別|皮膚の状態と見分け方

褥瘡は進行度によってステージ分類されており、早期発見には各ステージの皮膚状態を理解することが不可欠です。

ステージI(発赤期)

最も早期の段階で、皮膚に傷はありませんが、消退しない発赤が特徴です。

指で押しても白くならない発赤が見られたら、すでに皮下組織にダメージが及んでいる可能性があります。

皮膚温の上昇や硬結を伴うこともあります。

ステージII(水疱・びらん期)

表皮から真皮浅層までの損傷で、水疱や浅い潰瘍が見られます。

ピンク色から赤色の創面で、擦り傷のように見えることもあります。

この段階では、適切なケアで比較的短期間での治癒が期待できます。

ステージIII以降

真皮全層を超えて皮下組織まで達した状態です。

創は深く、黄色や黒色の壊死組織が見られることもあります。

この段階になると、専門的な治療が必要となります。

⚠ こんな時はすぐに医師に報告を

  • 消退しない発赤が24時間以上続く
  • 水疱や皮膚の剥離が見られる
  • 紫色や黒色の変色がある
  • 発熱や炎症の兆候がある

発赤を見つけたら?初期対応の5つのステップ

訪問看護中に発赤を発見した場合、迅速で適切な初期対応が褥瘡への進行を防ぎます

ステップ1:発赤の性質を確認する

まず、指で軽く押してみて、白くなるか(消退性発赤)、白くならないか(非消退性発赤)を確認します。

非消退性発赤の場合は、すでに組織損傷が始まっている可能性が高いです。

ステップ2:圧迫の除去

発赤部位への圧迫を即座に取り除きます。

体位変換や、クッションやエアマットなどの除圧用具を使用しましょう。

ステップ3:皮膚の清潔と保湿

微温湯で優しく洗浄し、保湿剤でスキンケアを行います。

強くこすらず、押し当てるように水分を取ることがポイントです。

ステップ4:記録と情報共有

発赤の部位、大きさ、色調、周囲の状態を詳細に記録します。

可能であれば写真撮影も有効です(利用者さんの同意を得て)。

医師や他の医療スタッフと速やかに情報を共有しましょう。

ステップ5:予防計画の見直し

なぜ発赤が生じたのか原因を分析し、体位変換の頻度や方法、使用している用具などを見直します。

在宅でできる効果的な褥瘡予防ケア

褥瘡予防は、圧迫・ずれ・摩擦の3つの外力を減らすことが基本です。

体位変換の実践

2時間ごとの体位変換が理想とされていますが、在宅では利用者さんや家族の生活リズムに合わせた現実的な計画が重要です。

30度側臥位や30度仰臥位など、骨突出部への圧迫を分散させる体位を活用しましょう。

スキンケアの徹底

皮膚の清潔と保湿は、バリア機能を維持するために欠かせません。

特に失禁のある方は、速やかに洗浄し、撥水性のある保護クリームを使用することで、湿潤による皮膚トラブルを防げます。

栄養管理のサポート

褥瘡予防には十分な栄養摂取が不可欠です。

特にタンパク質とビタミンC、亜鉛は皮膚の健康維持に重要な栄養素です。

摂取量が不足している場合は、医師や管理栄養士と連携して栄養補助食品の導入も検討しましょう。

✓ 日常生活でできる予防ポイント

  • ベッド上での姿勢を少しずつ変える(自分でできる場合)
  • シーツのしわを作らない
  • 衣類の縫い目やボタンが当たらないようにする
  • 水分摂取を促し、皮膚の乾燥を防ぐ

家族への説明で使える!皮膚観察の伝え方

在宅ケアでは、家族の協力が褥瘡予防の成功を左右します

しかし、専門用語ばかりでは理解が難しく、実践につながりません。

分かりやすい言葉で伝える

「褥瘡」ではなく「床ずれ」、「発赤」ではなく「赤くなっている」など、日常的な言葉に置き換えて説明しましょう。

「このまま放っておくと、皮膚に穴があいてしまう可能性があります」と具体的に伝えることも効果的です。

視覚的な資料を活用する

褥瘡の写真やイラストを見せながら説明すると、家族の理解が深まります。

また、「この部分を見てください」と実際に観察しながら説明することで、家族自身も観察できるようになります。

具体的な観察方法を実演する

「おむつ交換の時に、お尻の上の骨が出ている部分を見てください」など、日常のケアに組み込める観察タイミングを提案しましょう。

「指で軽く押して、赤みが消えなかったら教えてください」と、判断基準も明確に伝えます。

異常時の連絡方法を確認

「こんな時は連絡してください」という具体例を挙げて、躊躇なく相談できる環境を作ることが大切です。

まとめ:皮膚観察が褥瘡予防の第一歩

褥瘡予防において、皮膚の状態を正しく観察することは最も重要な第一歩です。

訪問のたびに好発部位をチェックし、発赤を見逃さないこと。

そして早期発見できたら、すぐに圧迫を除去し、医師に報告する。

このシンプルな流れを徹底するだけで、多くの褥瘡は予防できます。

明日の訪問から、ぜひこの記事で学んだ観察ポイントを実践してみてください。

利用者さんの皮膚を守ることは、その方の生活の質を守ることにつながります。


 

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