在宅介護をされている皆さん、ご利用者様の皮膚の状態に不安を感じたことはありませんか?
「赤くなっている部分を見つけたけれど、これは病院に行くべき?」
「毎日のケアで気をつけることがあれば知りたい」
「皮膚トラブルが悪化する前に、自宅でできることはないだろうか」
このような悩みを抱えている介護者の方は非常に多くいらっしゃいます。
皮膚トラブルは早期発見と適切なケアにより、重篤化を防ぐことが可能です。本記事では、在宅介護で頻繁に遭遇する皮膚トラブルの種類から予防法、初期対応まで、専門的な知識を分かりやすくお伝えします。
在宅介護で起こりやすい皮膚トラブルの種類
在宅介護の現場では、さまざまな皮膚トラブルが発生します。
まず、どのような症状が起こりやすいかを把握しておくことが重要です。
褥瘡(じょくそう)
褥瘡は、同じ体位を長時間続けることで起こる皮膚の損傷です。
特に骨の突出部位(仙骨部、踵部、肘部)に発生しやすく、在宅介護では最も注意すべき皮膚トラブルの一つです。
初期段階では皮膚の発赤から始まり、進行すると水疱形成、さらには深部組織まで達する潰瘍となる可能性があります。
接触性皮膚炎
おむつかぶれや、清拭用品による皮膚の刺激で起こる炎症です。
高齢者の皮膚は薄くデリケートなため、わずかな刺激でも赤みや湿疹が生じやすくなります。
真菌感染症
湿度が高い環境や、皮膚の清潔保持が不十分な場合に発生します。
特に皮膚の重なり合う部分(鼠径部、腋窩、乳房下)に白癬菌やカンジダが繁殖しやすくなります。
乾燥性皮膚炎
加齢により皮脂分泌が減少し、皮膚バリア機能が低下することで起こります。
かゆみを伴い、掻破により二次的な皮膚損傷を引き起こすこともあります。
皮膚トラブルの早期発見ポイント
皮膚トラブルは早期発見により、深刻化を防ぐことができます。
日常的な観察で注意すべきポイントをご紹介します。
視覚的チェックポイント
毎日のケア時に、以下の変化がないか確認しましょう。
色の変化
- 発赤(赤み)
- 紫斑(紫色の斑点)
- 白色化(血流不良のサイン)
- 黄色い分泌物
形状の変化
- 腫れや膨隆
- 陥凹(凹み)
- 皮膚の硬化
- 水疱の形成
触診でのチェックポイント
清拭や体位変換時に、皮膚の状態を手で確認することも大切です。
- 温度の変化(熱感や冷感)
- 硬さの変化
- 湿潤度
訴えに注意
痛みやかゆみの訴えがある場合は、症状の部位と程度を詳しく聞き取りましょう。
認知症がある方の場合、不穏状態や拒否行動が皮膚トラブルによる不快感の表れということもあります。
日常的な皮膚ケアの基本手順
適切な日常ケアにより、多くの皮膚トラブルは予防可能です。
基本的なケア手順を段階別に解説します。
清潔保持の基本
1. 清拭の方法
- ぬるま湯(36-38℃)を使用
- 石鹸は弱酸性または中性のものを選択
- 泡立てネットで十分に泡立ててから使用
- 擦らず、優しく押し当てるように清拭
2. 乾燥の方法
- 清潔なタオルで水分を吸い取る
- 擦らず、軽く押し当てて乾燥
- 皮膚の重なり合う部分は特に丁寧に乾燥
保湿ケアの実施
皮膚の乾燥は多くのトラブルの原因となります。
保湿剤の選び方
- セラミドやヒアルロン酸配合のもの
- 無香料・無着色
- 敏感肌用として販売されているもの
塗布方法
- 清拭後、皮膚が湿潤している間に塗布
- 手のひらで温めてから使用
- 円を描くように優しくマッサージ
体位変換の重要性
褥瘡予防には定期的な体位変換が欠かせません。
- 2時間毎の体位変換を基本とする
- クッションやエアマットを活用
- 皮膚の状態確認も同時に実施
症状別の対処法と注意点
発見した皮膚トラブルに対する初期対応方法をご説明します。
ただし、これらは応急処置的なものであり、症状が改善しない場合は必ず医療機関を受診してください。
軽度の発赤への対処
対処法
- 発赤部位への圧迫を避ける
- 清潔保持を継続
- 適度な保湿を行う
- 24-48時間経過観察
- マッサージは絶対に行わない
- 発赤が拡大する場合は即座に医療機関へ
接触性皮膚炎への対処
対処法
- 原因となる刺激物質を除去
- 微温湯での清拭
- 十分な乾燥
- 保護クリームの塗布
真菌感染が疑われる場合
対処法
- 患部を清潔に保つ
- しっかりと乾燥させる
- 通気性を良くする
- 早めに医療機関を受診
- 市販の薬剤の自己判断での使用は避ける
- タオルの共用は絶対に避ける
乾燥性皮膚炎への対処
対処法
- 入浴時の湯温を下げる(38℃以下)
- 石鹸の使用を最小限にする
- 保湿剤の使用頻度を増やす
- 室内湿度を適切に保つ(50-60%)
病院受診の判断基準
自宅でのケアで様子を見るか、医療機関を受診するかの判断は非常に重要です。
以下の症状がある場合は、迅速に医療機関を受診してください。
緊急受診が必要な症状
感染症状
- 発熱(37.5℃以上)
- 患部からの膿性分泌物
- 悪臭
- 周囲への炎症拡大
重篤な皮膚損傷
- 皮膚の深い潰瘍
- 黒色に変色した組織
- 出血が止まらない
- 激しい痛み
数日以内の受診が望ましい症状
- 48時間以内に改善しない発赤
- 範囲が拡大する皮疹
- かゆみが強く、夜間睡眠を妨げる
- 食欲低下や活動性の低下を伴う
医療機関受診時の準備
受診時には以下の情報を整理しておきましょう。
症状の経過
- 発症時期
- 症状の変化
- 実施したケア内容
写真の活用
スマートフォンで症状の写真を撮影しておくと、医師への説明に役立ちます。
皮膚トラブル予防のための環境整備
皮膚トラブルの予防には、日常的なケアだけでなく、環境の整備も重要です。