「もう限界かも…」「なんだか涙が出そう」
そんな風に感じることって、看護師として働いていると本当に多いですよね。
患者さんやご家族の対応、医師との連携、夜勤による生活リズムの乱れ、プライベートとの両立…。私自身も10年以上看護師として働く中で、何度も心が折れそうになりました。
この記事では、看護師として現場で感じたストレスと向き合いながら実践してきたセルフケアを、医学的根拠とともに紹介します。
専門職だからこそ、自分のメンタルヘルスを大切にする方法を一緒に見つけていきましょう。
毎日頑張りすぎて、気づいたら心がボロボロになってた…
なぜ看護師は心が疲れやすいのか?
まず知っておいてほしいのは、看護師という職業は心理的負担が非常に大きいという事実です。これは甘えでも弱さでもありません。
感情労働としての看護
看護師は「感情労働」と呼ばれる職種です。自分の感情をコントロールしながら、患者さんには常に笑顔で接する。悲しいニュースを伝えるとき、理不尽なクレームを受けるとき、それでもプロとして振る舞わなければなりません。
この「本当の気持ちと表に出す表情のギャップ」が、心を確実に消耗させていきます。心理学では「感情不協和」と呼ばれ、バーンアウト(燃え尽き症候群)の主要因とされています。
命を預かるプレッシャー
薬剤投与のダブルチェック、急変対応、インシデントへの恐怖…。看護師の仕事は常に緊張感の連続です。
ある研究では、看護師の約60%が「仕事中に慢性的なストレスを感じている」と回答しています。この状態が続くと、副腎からストレスホルモン(コルチゾール)が過剰に分泌され、心身の不調につながるのです。
心が疲れたサインを見逃さない
セルフケアを始める前に、自分が今どれくらい疲れているかを知ることが大切です。看護師は他人のケアには敏感でも、自分の不調には鈍感になりがちです。
こんな症状が出ていませんか?
- 身体的サイン:頭痛、肩こり、胃痛、食欲不振、不眠、めまい、動悸
- 精神的サイン:イライラ、涙もろい、集中力低下、無気力感、自己否定
- 行動的サイン:遅刻が増える、ミスが多くなる、人と会いたくない、お酒の量が増える
私自身、3年目のときに不眠と食欲不振が続き、「これはおかしい」と気づいて初めて心療内科を受診しました。看護師だからこそ、自分の症状を客観的に見る視点が必要です。
今すぐできる!看護師が実践する7つのセルフケア
ここからは、実際に私が現場で試して効果を感じたセルフケアを紹介します。全部やる必要はありません。「これならできそう」と思えるもの1つから始めてみてください。
①「3分だけ」の深呼吸タイム
勤務中、休憩中、帰宅後。どこでもいいので、1日3分だけ深呼吸の時間を作ってみてください。
やり方:
- 4秒かけて鼻から息を吸う
- 7秒息を止める
- 8秒かけて口からゆっくり吐く
- これを3〜5回繰り返す
この「4-7-8呼吸法」は、副交感神経を優位にしてリラックス状態を作ります。夜勤前の仮眠前に行うと、入眠もスムーズになりますよ。
夜勤中にナースステーションでこっそりやるのもおすすめ。電子カルテに向かいながらでもできます。
②「書き出す」ことで心を整理する
モヤモヤした気持ちを抱えたまま寝ると、睡眠の質が下がります。そんなときは、寝る前に5分だけ、今日のストレスをノートに書き出してみてください。
「〇〇さんの言葉が傷ついた」「インシデントが怖い」「疲れた」
何でもOKです。誰にも見せないので、正直に書きましょう。
これは「エクスプレッシブ・ライティング」という心理療法の手法で、感情を外に出すことで脳の整理が進み、ストレス軽減につながることが研究で証明されています。
③完璧をやめる「70点思考」
看護師は真面目で責任感が強い人が多いです。だからこそ、「完璧にやらなきゃ」という思い込みが自分を追い詰めます。
私が先輩から教わったのは「70点でいい」という考え方。患者さんの安全は絶対に守る。でも、記録の言い回しや業務の優先順位で迷ったら、「70点で十分」と自分に言い聞かせる。
この思考に切り替えただけで、心がずいぶん楽になりました。
④体を動かして「脳をリセット」
メンタルが落ち込んでいるとき、実は体を動かすことが最も効果的だと言われています。
運動によってセロトニン(幸せホルモン)やエンドルフィンが分泌され、気分が前向きになります。激しい運動である必要はありません。
- 帰り道に一駅分歩く
- YouTube動画でストレッチ(10分程度)
- 休日に近所を散歩する
私は夜勤明けの日、無理に寝ようとせず、15分だけ外を歩くようにしています。日光を浴びることで体内時計もリセットされ、その後の睡眠の質が上がりました。
⑤「誰かに話す」勇気を持つ
心が疲れたとき、一番してはいけないのが「一人で抱え込むこと」です。
同僚、友人、家族、誰でもいいので信頼できる人に話してみてください。「愚痴を言うのは恥ずかしい」と思うかもしれませんが、感情を言語化して誰かに聞いてもらうだけで、脳の負担は大きく減ります。
もし身近に話せる人がいなければ、病院の産業医や看護協会の相談窓口、心療内科も選択肢です。私自身、カウンセリングに通った時期がありましたが、「話す場所がある」という安心感が支えになりました。
話すだけで、こんなに楽になるんだって実感した
⑥「自分を褒める」習慣を作る
看護師は「できて当たり前」の仕事が多く、褒められることが少ない職業です。だからこそ、自分で自分を褒める習慣が必要です。
「今日も無事に勤務を終えた」「あの患者さんに笑顔で接せられた」「インシデントを起こさなかった」
小さなことでいいんです。寝る前に1つ、自分を褒めてあげてください。
これを続けると、自己肯定感が少しずつ回復していきます。
⑦「何もしない時間」を許す
休日に予定を詰め込んでいませんか?「せっかくの休みだから」と無理に出かけたり、家事をこなそうとしたり。
心が疲れているときは、何もしない時間こそが最高の回復法です。ベッドでゴロゴロ、ぼーっとテレビを見る、好きな音楽を聴く。罪悪感を持たず、自分に休息を与えてあげましょう。
脳科学的にも、「何もしない時間」に脳のデフォルトモード・ネットワークが働き、記憶の整理や創造性が高まることがわかっています。
プロに頼ることも立派なセルフケア
ここまでセルフケアを紹介してきましたが、自分だけで対処できない状態もあります。
こんなときは専門家に相談を
- 2週間以上、気分の落ち込みが続いている
- 何をしても楽しいと感じない
- 死にたいと思うことがある
- 仕事に行けない日が続いている
- アルコールや薬に頼らないと眠れない
これらの症状がある場合は、うつ病や適応障害の可能性があります。心療内科や精神科の受診を検討してください。
心療内科の初診は予約が取りにくいことが多いです。「まだ大丈夫」と思っても、早めに予約を取っておくことをおすすめします。
また、職場の産業医面談や看護協会の相談窓口も活用できます。看護師だからこそ、医療へのアクセスをためらわないでください。
看護師を続けるために、自分を守る選択を
看護師という仕事は、やりがいがある反面、心身ともに消耗する職業です。でも、自分を犠牲にしてまで続ける必要はありません。
部署異動、勤務形態の変更、転職、一時的な休職…。選択肢はたくさんあります。私自身、病棟から外来に異動したことで、心の余裕が生まれました。
「逃げ」じゃないんです。「自分を守る」ための立派な選択です。
まとめ:小さな一歩から始めよう
心が疲れたとき、「頑張らなきゃ」と自分を追い込む必要はありません。まずは今日紹介した7つのセルフケアから、1つだけ試してみてください。
- 3分の深呼吸
- 感情を書き出す
- 70点思考に切り替える
- 少しだけ体を動かす
- 誰かに話す
- 自分を褒める
- 何もしない時間を作る
看護師として患者さんをケアするように、自分自身もケアしてあげてください。あなたが健康でいることが、結果的に患者さんへの最高のケアにつながります。
心が疲れたら、休んでいい。助けを求めていい。
あなたは一人じゃありません。一緒に、少しずつ前に進んでいきましょう。