「記録られ
「記録がいちばん時間を食う」「書いたのに伝わらない」――現場あるあるですよね。でも、SOAP(Subjective/Objective/Assessment/Plan)で筋道をそろえるだけで、情報は短く・正確に・再現性高く伝わります。本記事では、訪問看護の現場でそのまま使える書き方やコピペOKのテンプレ、NG例→修正例、チェックリストまで一気通貫でまとめました。施設ルールに従いつつ、少しずつ自分の現場にフィットさせていきましょう。
SOAPとは(30秒でおさらい)
- S:Subjective(主観情報)…患者・家族の訴えや生活背景、言葉そのもの。
- O:Objective(客観情報)…バイタル、創部所見、食事摂取量、服薬状況、測定値、写真など。
- A:Assessment(評価)…SとOを統合して導く看護評価。仮説・重症度・リスクを含む。
- P:Plan(計画)…今日やること、次回までの方針、家族・多職種への依頼、観察ポイント。
ポイントは「S→O→A→Pの順番を守る」こと。Aで主観に引っ張られすぎず、Pで曖昧語(様子を見る)に逃げない――ここだけ守れば記録の質が格段に上がります。
書き方の原則(現場で失敗しない5箇条)
- Sは引用と要約を区別:患者の言葉は「 」で引用。要約は看護師の解釈を入れない。
- Oは数値化・比較:単発の数値より前回比で変化を書く(例:SpO2 95%→93%)。
- Aは「なぜ今それが言えるか」を明記:根拠Oを1〜2個だけ添える。長文化を防ぐ。
- Pは実行者・期限・判定基準:誰が/いつまでに/何をもって良否を判定するかを明確に。
- 固有名詞と略語:施設の略語集に従い、迷ったら正式名称を使用。
実例ケース1:心不全既往・息切れ訴え(在宅)
S(主観)
「朝から少し動くと息が上がる。いつもよりむくむ」(本人)
「昨夜は枕を高くして寝た」(配偶者)
O(客観)
- 意識清明、会話可。SpO2 93%(室内気)、呼吸数 22/分、脈 96/分、体温 36.8℃
- 両下腿に圧痕性浮腫(+/膝下)、体重 2.0kg増(前月比)
- 聴診:湿性ラ音(両下肺野わずかに)
- 服薬:内科処方通りと本人申告、塩分制限メモあり
A(評価)
心不全の軽度増悪を疑う。
根拠:息切れの自覚増強(S)、体重増加+浮腫(O)、SpO2軽度低下(O)、聴診所見(O)。
緊急性は中等度。脱水より体液貯留が主体。
P(計画)
- 本日:浮腫・呼吸状態モニタ継続、安静度指導(入浴・階段控える)。
- 家族:塩分2g/食の目安表を渡し、食材選びを具体例で説明。
- 医師へ報告:SpO2・体重・浮腫・ラ音の変化を電話連絡。利尿薬調整の可否を相談。
- 次回まで:毎朝の体重測定と下腿周囲の写真記録。悪化基準(息切れ増悪・夜間起座呼吸・体重+1kg/24h)を共有。
NG:A「ちょっと悪い感じ。様子をみる」
→ 修正:A「浮腫・体重増加・SpO2低下より体液貯留が示唆。利尿薬調整を要検討」
NG:P「安静にしてもらう」
→ 修正:P「入浴・階段控え、屋内50m以内の歩行。基準逸脱なら家族が看護師へ即連絡」
実例ケース2:糖尿病+足潰瘍の自己管理(在宅)
S
「昨日から足の傷がしみる。歩くと痛い」(本人)
「入浴後に赤くなっていた」(家族)
O
- 右第1趾外側に潰瘍 0.8×0.6cm、滲出少量、周囲発赤(+/軽度熱感)
- 足背動脈触知(+/両側)、足趾冷感なし
- 血糖:食前 162mg/dL(直近自己測定)、HbA1c 7.8%(先月)
- フットケア教材配布済み(先月)、自己観察シートの提出は途切れがち
A
感染兆候は軽度。創管理の継続と血糖コントロールの再強化が必要。セルフチェックの習慣化が不十分。
P
- 創部:洗浄→保湿→非固着性ガーゼで被覆。交換は1日1回、濡れたら即交換。
- 教育:入浴後の観察項目(発赤・熱感・滲出・痛み)をチェックリスト化し洗面所に掲示。
- 血糖:主治医へ現状共有。食後高血糖が続く場合の食事指導(主食量の見直し)を管理栄養士に依頼。
- 次回まで:観察シートの写真送付を週3回。赤み拡大・悪臭・発熱時は受診基準を明確化。
テンプレート(コピペOK:日々のSOAPひな型)
【S】主観情報
- 本人・家族の発言(「 」で引用)
- 症状の出た時刻/状況/増悪・寛解因子
【O】客観情報
- バイタル(前回比):BP / HR / RR / SpO2 / T
- 創・むくみ・疼痛スケール・摂食量・排泄量・服薬状況
- 写真・測定値(必要時)
【A】評価
- 判断(仮説)+根拠Oを1〜2個
- リスク(急変・転倒・誤嚥 等)
- 緊急度(高/中/低)
【P】計画
- 今日やること(実行者・期限・判定基準)
- 家族教育/生活指導の要点
- 医師・多職種への報告/依頼内容
- 次回までの観察ポイントと連絡基準
NG表現→言い換え辞典(すぐ直せる)
NG | OK(観察・評価が伝わる言い換え) |
---|---|
「しんどそう」 | 「会話中に呼吸数 24/分、発話中断2回」 |
「創が悪化」 | 「潰瘍径 0.5→0.8cm、周囲発赤範囲+0.5cm」 |
「様子見る」 | 「SpO2<92% or 体重+1kg/24hで医師へ直通連絡」 |
「指導した」 | 「配布資料No.3で減塩ポイント3項目を説明、復唱で理解確認」 |
監査で困らない最終チェックリスト
- 日付・訪問時間・署名の抜けなし
- Sに看護師の推測混入なし/Oは数値・客観語で記載
- Aは短く根拠つき/Pは実行者・期限・基準入り
- 前回からの変化が1行で分かる(↑↓→など記号も可)
- 個人情報・固有名詞の扱いは施設基準に準拠
よくある質問(Q&A)
- Q. 長くなりすぎます。
- A. Aを「結論+根拠1〜2」に圧縮。詳細はOの箇条書きへ。Pは行動・期限・基準の3点セットで短く。
- Q. どこまで写真を撮る?
- A. 経時変化が重要な創・浮腫・皮疹は有効。ただし同意取得と保管ルールは必守。
- Q. 他職種向けに表現は変える?
- A. 基本は同じ。医師報告はAを先頭に持ってくるSBAR形式も併用すると通りが良い。
まとめ
SOAPは「型」です。型に沿って最小限の根拠で評価を置き、計画を具体化する――これだけで伝達の手戻りと書き直し時間が目に見えて減ります。まずは本記事のテンプレから始め、あなたの現場語にアレンジしていきましょう。