「なんだか体がだるい…」「頭が痛い…」それ、もしかして脱水のサインかもしれません。
看護師として救急外来や病棟で働いてきた中で、脱水症状で運ばれてくる患者さんを数え切れないほど見てきました。
特に夏場や、風邪・胃腸炎の後は要注意です。
脱水は「喉が渇いてから水を飲めばいい」と思われがちですが、実は喉の渇きを感じた時点で、すでに体は脱水状態に入っています。
この記事では、看護師として現場で学んだ「脱水のサイン」と「今すぐできる対処法」「予防のコツ」を、わかりやすく解説します。
自分や家族の健康を守るために、ぜひ最後まで読んでみてください。
脱水症とは?体の中で何が起きているのか
脱水症とは、体の中の水分と電解質(ナトリウムやカリウムなど)が不足している状態のことです。
人間の体は成人で約60%、子どもで約70%が水分でできています。
この水分は、血液として栄養や酸素を運んだり、体温を調節したり、老廃物を排出したりと、生命維持に欠かせない働きをしています。
体重の2%の水分が失われると、軽度の脱水症状が現れます。60kgの人なら、わずか1.2リットルの水分が失われるだけで体に影響が出るんです。
脱水になると、血液がドロドロになり、心臓や腎臓に負担がかかります。
さらに進行すると、意識障害やけいれん、最悪の場合は命に関わることも。
脱水が起こりやすい3つのパターン
臨床現場で見てきた脱水の原因は、大きく分けて3つです。
- 水分摂取不足:忙しくて水を飲む暇がない、高齢で喉の渇きを感じにくいなど
- 水分喪失過多:発熱、下痢、嘔吐、大量の発汗、利尿剤の使用など
- 両方の組み合わせ:夏場の運動や、風邪で食欲がない時など
特に注意が必要なのは、高齢者と乳幼児です。
高齢者は喉の渇きを感じにくく、乳幼児は体の水分割合が高いため、短時間で脱水になりやすいのです。
【重要】脱水のサイン10選〜こんな症状は要注意!
看護師として患者さんを診るとき、私たちはこんなサインを見逃しません。
ご自身や家族に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
1. 喉の渇き・口の中がネバネバする
これは最も分かりやすいサインですが、喉が渇いたと感じた時点で、すでに軽度の脱水が始まっています。
口の中がネバネバしたり、唾液が少なくなったりするのも脱水のサインです。
2. 尿の量が少ない・色が濃い
正常な尿は薄い黄色ですが、脱水になると濃い黄色〜オレンジ色になります。
尿の回数が減ったり、量が少なくなったりするのも要注意です。
トイレに行く回数が減ったな…
こう感じたら、意識的に水分を摂るようにしましょう。
3. めまい・立ちくらみ
脱水で血液量が減ると、血圧が下がりやすくなります。
特に立ち上がった時にクラッとするのは、脱水のサインかもしれません。
救急外来で「立ち上がった瞬間に倒れた」という患者さんの多くが、脱水による起立性低血圧でした。
4. 頭痛・倦怠感
脱水になると、脳への血流が減少し、頭痛が起こります。
また、全身の細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなるため、強い倦怠感を感じます。
「なんとなくだるい」「体が重い」という感覚も、実は脱水が原因のことが多いんです。
5. 皮膚の弾力がなくなる(ツルゴール低下)
これは看護師が必ずチェックする項目です。
手の甲の皮膚をつまんで離した時、すぐに戻らない場合は脱水の可能性があります。
高齢者の場合は、おでこの皮膚でチェックするとより正確です。手の甲は年齢による皮膚の変化が出やすいためです。
6. 目が落ち窪んで見える
特に子どもで顕著に現れるサインです。
脱水が進むと、目の周りの組織から水分が失われ、目が窪んで見えます。
乳幼児の場合は、大泉門(頭のてっぺんの柔らかい部分)が凹むこともあります。
7. 集中力の低下・イライラ
脱水は脳の機能にも影響します。
集中できない、イライラする、判断力が鈍る…こんな時は水分不足かもしれません。
実は、私自身も夜勤中に水分摂取を忘れて、頭がぼーっとした経験があります。
スポーツドリンクを飲んだら、驚くほどシャキッとしました。
8. 筋肉のけいれん・こむら返り
脱水で電解質バランスが崩れると、筋肉が正常に働かなくなります。
夜中に足がつる、運動中に筋肉がけいれんする…これらも脱水のサインです。
9. 心拍数が速くなる
脱水で血液量が減ると、心臓は少ない血液を全身に送るため、いつもより速く動かざるを得なくなります。
安静時でも動悸を感じたら要注意です。
10. 吐き気・食欲不振
脱水が進むと、消化機能も低下します。
特に子どもや高齢者は、脱水で吐き気を訴えることが多いです。
重度の脱水症状(意識障害、けいれん、激しい嘔吐や下痢が続く場合)は、すぐに医療機関を受診してください。
年代別・脱水のサインの見分け方
脱水のサインは、年齢によって現れ方が違います。
現場で学んだ、年代別のチェックポイントをお伝えします。
乳幼児(0〜6歳)の脱水サイン
- おしっこの回数が減る(おむつが6時間以上濡れない)
- 泣いても涙が出ない
- 口の中が乾いている
- ぐったりして元気がない
- 大泉門が凹んでいる(1歳未満)
子どもは体の水分割合が高く、短時間で脱水になりやすいため、特に注意が必要です。
夏場や発熱時、下痢・嘔吐がある時は、こまめな水分補給を心がけてください。
成人(7〜64歳)の脱水サイン
- 喉の渇き、口の乾燥
- 尿の色が濃い、量が少ない
- 頭痛、めまい、倦怠感
- 皮膚の弾力低下
- 集中力の低下
働き盛りの世代は、忙しさで水分摂取を忘れがち。
デスクワークの方も、冷房の効いた室内で知らず知らずのうちに脱水になっていることがあります。
高齢者(65歳以上)の脱水サイン
- 喉の渇きを感じにくい
- 皮膚がカサカサしている
- 急に元気がなくなる、ぼーっとする
- 食欲がない
- 転倒しやすくなる
高齢者は喉の渇きを感じにくく、腎機能も低下しているため、自覚症状がないまま脱水が進行することがあります。「水分を摂ってください」と声をかけることが、ご家族にできる大切なケアです。
脱水になった時の正しい対処法
軽度の脱水なら、自宅でのケアで回復できます。
看護師として患者さんに指導してきた、正しい対処法をお伝えします。
1. 水分と電解質を同時に補給する
脱水の時は、水だけでなく電解質も失われています。
以下のような飲み物がおすすめです。
| 飲み物 | 特徴 | おすすめ度 |
|---|---|---|
| 経口補水液(OS-1など) | 電解質バランスが最適。医療現場でも使用 | ★★★★★ |
| スポーツドリンク | 飲みやすく手に入りやすい。糖分がやや多い | ★★★★☆ |
| 麦茶 | ミネラル含有。日常的な水分補給に最適 | ★★★☆☆ |
| 水 | 電解質は含まれないが、軽度の脱水には有効 | ★★★☆☆ |
脱水症状が出ている時は、経口補水液が最も効果的です。
薬局やコンビニで購入できるので、常備しておくと安心です。
2. 一気に飲まず、少しずつ飲む
脱水だからといって、一度に大量の水を飲むのは逆効果。
胃に負担がかかり、吐き気を催すこともあります。
15〜30分ごとに、コップ半分〜1杯程度を少しずつ飲むのが理想的です。
吐き気があって飲めない時はどうすればいい?
そんな時は、氷を舐めたり、スプーン1杯ずつ口に含んだりする方法も有効です。
それでも飲めない場合は、早めに医療機関を受診してください。
3. 涼しい場所で安静にする
熱中症を伴う脱水の場合は、体温を下げることも重要です。
- 涼しい場所に移動する
- 衣服を緩める
- 首、脇の下、太ももの付け根を冷やす
- 横になって休む
体温が下がり、水分補給ができれば、徐々に回復していきます。
4. すぐに病院に行くべき症状
以下のような症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診してください。
- 意識がもうろうとしている、反応が鈍い
- けいれんを起こしている
- 激しい嘔吐や下痢が続いている
- 水分が全く摂れない
- 尿が12時間以上出ていない
- 高熱が続いている
特に乳幼児や高齢者の場合は、症状が急速に進行することがあるため、早めの受診が大切です。
脱水を予防する5つの生活習慣
脱水は予防が何より大切。
看護師として患者さんに伝えてきた、日常でできる予防法をご紹介します。
1. 喉が渇く前に水分を摂る
繰り返しになりますが、喉が渇いた時点で脱水は始まっています。
以下のタイミングで、意識的に水分を摂りましょう。
- 起床時
- 食事の前後
- 入浴の前後
- 運動の前・中・後
- 就寝前
1日の目安量は、成人で1.5〜2リットル程度。
夏場や運動時は、さらに多めに摂るようにしてください。
2. カフェインとアルコールは控えめに
コーヒーやお酒には利尿作用があり、体から水分を排出してしまいます。
特にアルコールは、飲んだ量以上の水分を体から失わせるため、脱水リスクが高まります。
飲んだ後は、必ず水や麦茶で水分補給を忘れずに。
3. 食事からも水分を摂る
みそ汁、スープ、果物など、食事からも水分は摂取できます。
特に夏場はスイカやきゅうりなど、水分の多い食材を意識して食べるのがおすすめです。
高齢者で食事量が減っている方は、食事からの水分摂取も減っています。水分補給の重要性がより高まるので、ご家族の声かけが大切です。
4. 環境を整える
室温や湿度も脱水リスクに関係します。
- 室温は28度以下を目安に
- 湿度は50〜60%を保つ
- 直射日光を避ける
- 通気性の良い服を着る
特に高齢者は暑さを感じにくいため、温度計・湿度計を置いて、客観的に環境をチェックすることが大切です。
5. 体調が悪い時は特に注意
発熱、下痢、嘔吐がある時は、通常より多くの水分が失われます。
こんな時こそ、意識的に水分補給を。
食欲がなくても、経口補水液やスポーツドリンクなら飲めることも多いです。
少しずつでも、こまめに摂るようにしてください。
【体験談】夏の夜勤で脱水になりかけた話
最後に、私自身の体験談をお話しします。
ある夏の夜勤、救急外来は熱中症の患者さんで溢れていました。
休憩も取れないほど忙しく、気づけば水分を全く摂っていませんでした。
明け方、急に頭痛とめまいが…。
「あ、これ脱水だ」とすぐに気づき、スポーツドリンクを飲んで休憩室で横になりました。
看護師なのに、自分の体のサインを見逃すところでした。
それからは、忙しい時こそ意識的に水分を摂るように心がけています。
忙しいとつい水分摂取を忘れちゃう…
そんな方は、デスクに水筒を置く、タイマーで水分補給の時間を設定するなど、工夫してみてください。
まとめ:脱水のサインを見逃さず、早めの対処を
脱水は、誰にでも起こりうる身近な健康リスクです。
でも、サインを知っていれば、早めに対処できます。
特に覚えておいてほしいポイント
- 喉が渇いた時点で、すでに脱水は始まっている
- 尿の色と量は、脱水のわかりやすいバロメーター
- 高齢者と乳幼児は特に注意が必要
- 軽度なら経口補水液で自宅ケア可能
- 意識障害やけいれんがあれば、すぐに受診を
看護師として、たくさんの脱水患者さんを見てきました。
そのほとんどが「もっと早く水分を摂っておけばよかった」と話されます。
この記事が、あなたやご家族の健康を守るきっかけになれば嬉しいです。
今日から、意識的な水分補給を習慣にしていきましょう。
体調に不安がある時は、自己判断せず、医療機関を受診してください。
この記事はあくまで一般的な情報であり、個別の医療アドバイスではありません。
健康で快適な毎日を過ごせますように。